相場の天井と底で現れるサイン

株式投資を行う上で相場の状態を見極めることはとても大切です。上昇相場であれば多くの銘柄が上昇する一方で、下落相場となれば超優良銘柄でさえも下落に転じます。上昇相場だけを選んで投資することができれば成績は大きく向上することでしょう。

「オニールの成長株発掘法」で紹介されている株価が天井や底を付けるときに現れる特徴的な動きを学ぶことで、勝率の高い上昇相場を選んで投資をする術を身につけましょう。

このページで分かること

上昇相場の天井を知る方法
下落相場の底を知る方法

相場の状態はチャートに現れる

相場の状態を知りたければ、相場を注意深く観察するしかありません。相場の全てを織込んだ情報媒体が株価チャートです。株価指数や個別銘柄の動きを観察することで、新たな相場の始まりと終わりの予兆を掴むことができます。

相場を操る大口投資家の買い場と売り場

株価が上昇するためには市場に大量の資金が流入する必要があります。反対に資金が流出してしまえば、株価は失速し下落トレンドが始まります。つまり相場の行先を知りたければ、資金の動きに注目してチャートを見ればよいのです。

相場全体に影響を及ぼすことができるのは機関投資家を始めとした大口投資家たちです。大口投資家が株を買い始めれば市場に資金が流入し株価は上昇売り始めれば市場から資金が流出し株価が下落に転じてしまいます。…気づきましたか?大口投資家の売買が天井や底を作り出すため、相場の反転サインは実際の天井や底より前に現れるのです。

上昇相場の天井に現れるサイン

どこまでも株価が上昇すると思ってしまう強気相場であってもいつか終わりを迎えます。しかし相場の天井は突然訪れる訳ではありません。株価があがっていく途中で大口投資家が売り抜けたサインが現れるはずです。オニールの成長株発掘法で述べられている4つの天井サインを探してみましょう。

ストーリングとディストリビューション

株価の失速(ストーリング)

上昇トレンドの終盤、株価が天井を付ける直前に機関投資家を始めとした大口投資家は株を売り抜けます。チャート上に初めて現れる売り抜けサインはストーリング(失速)の動きです。ストーリングとは出来高が増加したにも関わらず株価は横ばいの状態を指します。出来高が多いのに株価が上昇できないのは、売り圧力が強まっていることを示しています。

次の4本の陽線で考えてみましょう。出来高を増やしながら4連続で陽線が現れました。よく見ると4本目の陽線は出来高の割に小さいですね。売りたい投資家が増え失速がはじまったと考えられます。

ストーリングの動きが見えた翌日、何事もなかったように再び株価が上昇を始めることがありますが安心してはいけません。大きな資金が市場から抜けた後、他の資金が流入しているのか、さらに流出が続くのか注意深く見守る必要があります。

大口投資家の売り抜け(ディストリビューション)

ストーリングに続いてチャート上に現れる異変は出来高増の下落、ディストリビューション(売り抜け)の動きです。ストーリングでは株価は上昇~横ばいでしたが、本格的な売り抜けが始まると下落が目立ち始めます。

オニールの成長株発掘法では、ディストリビューションの判断基準を出来高が前日より多く、下落幅が0.2%を超える日としています。Trading viewのインジケーターで自動でディストリビューション日を表示してくれるものがあるので参考にしてみてください。

Auto Flag Distribution Days (外部リンク)

ディストリビューションが起これば相場が天井を付けるわけではありません。オニールの研究によると、天井を付ける前の売り抜けは4~5週間に3~5日起こると言われています。まだ市場が上昇中であっても、売り抜けの動きが見えたら保有資産の現金化を進めることが望ましいでしょう。

とは言ったものの、個人的にはディストリビューションの動きだけで天井を見抜くことは難しいと考えています(^_^;)。上昇相場の調整でもディストリビューションが発生することがあるからです。ディストリビューションは市場に現れる異変のひとつに過ぎず、他の要素と組み合わせなければ相場環境を正しく分析することはできないでしょう。

急落からの弱い反発

ディストリビューションが連発することで、相場の天井を迎え弱気相場に入った可能性が高くなったとしても、株価が勢いよく底を目指すことは稀です。多くの場合は急落した後に反発し、再び高値を目指そうとします。ディストリビューションによる天井サインが本物であれば、反発の流れの中で弱さが見えるはずです。弱さを示す動きには次のようなものがあります。

  • 株価が上昇していくのに出来高が減少していく
  • 上昇過程で平均株価の上げ幅が小さくなっていく
  • 寄付きは強いが引けにかけて株価が下落する
  • 前回高値まで半値戻しにも失敗する

反発に弱さが見られると天井サインが本物であった確率が高くなります。さらに保有株の売却を進めたほうが良いかもしれません。

主導株の異常な動き

相場の天井が近づくとき、株価指数だけではなく個別株にも異変が現れます。強気相場を牽引してきた主導株たちの様子を確認するようにしましょう。主導株が天井を付ければ牽引役のいなくなった相場は終わりを迎える可能性が高くなります。主導株の異常として次の3点に注目し、市場を観察してみましょう。

  • クライマックストップ
  • 直近四半期収益の深刻な伸び悩み
  • 適切なベースを形成している銘柄が見当たらない

ひとつの主導株がクライマックストップを迎えて天井を付けるだけで強気相場が終わるわけではありません。主導株たちの多くが天井を付けた、新たに上昇を始める主導株候補が見当たらないといった状況になると危険信号です。

主導株の失速と停滞株の上昇

株価指数が上昇した日であっても個別株はそれぞれ値動きが異なります。勢いよく上昇して市場を牽引する銘柄もあれば、下落して足を引っ張る銘柄もあります。注目すべきは市場を牽引している銘柄がどのようなものかということです。上昇相場をけん引することができるのは主導株(優れた成長株)だけです。天井を付けた後、指数が戻りを試しているのに主導株が反発しないときは危険サインです。この反発を牽引しているの割安だからと買われているだけの魅力のない停滞株です。輝かしい主導株が牽引できなかった相場を停滞株が牽引できるわけがありません。指数は再び下落に転じる可能性が高いと考えられます。

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時期①:主導株が市場を牽引、天井を付け調整局面へ
時期②:株価指数は再度上昇、高値更新を目指す。
    しかし主導株の反発は弱く、市場を牽引するのは停滞株に交代
時期③:停滞株が市場を牽引しきれず失速、株価指数、主導株と共に下落トレンドへ

株式市場を注意深く観察すれば天井のサインを見抜くことができるはずです。下落リスクが高まったと考えられる局面では無理に勝負しないようにしたいですね。

下落相場の底に現れるサイン

上昇相場の天井を察知して暴落から資産を守ることができれば、次はいつ市場に戻るかが気になりますよね。しかし下落相場が底を打つ前後はボラリティが高くなるため、判断を誤れば大きな損失を被ります。大底を当てることに拘るのではなく、新たに始まる上昇相場にうまく乗るという感覚で市場に戻る感覚の方が事故が少ないでしょう。

下落相場が底を打ったことを示唆する相場の動きを2つ確認してみましょう。

フォロースルーの動き

「落ちるナイフを掴むな」という格言がありますね。セリングクライマックスの動きが見られたらナイフが床に刺さったと考えて拾いに行く人たちがいますね。しかし実際にはナイフが床にきれいに刺さることは滅多にありません。床に当たったナイフは転がり暴れまわります。このタイミングで手を出せば血塗れになります。怪我を防ぐための方法として、オニールの成長株発掘法ではフォロースルーを確認することを推奨しています。

フォロースルーとは出来高増加を伴った+1.5~2.0%以上の株価上昇の動きを指します。通常は反発の1日目(底で表られる陽線 or 下髭陰線)から数えて4~7日目に起こります。まれに3日目に起こることもありますが、1~3日目の全てで出来高増加&大幅な上昇が起こることが条件です。

下落相場の底打ちサインが現れても、株価が一直線に高値に戻ることは稀です。多くの場合は再び調整の動きを見せます。調整の過程で出来高が減少する、安値を切り上げて上昇に転じるなどフォロースルーの確かさを裏付ける証拠を探しながら徐々に相場に戻ることでだましを回避しましょう。

新たな主導株のブレイクアウト

下落相場が底打ちし新たな強気相場が始まるために必要なものはフォロースルーだけではありません。強気相場の上昇を牽引する主導株が現れたかを確認するようにしましょう。

主導株はカップウィズハンドルVCPパターンなどのベースからブレイクアウトします。フォロースルーの発生と合わせて主導株のブレイクアウトを探してみましょう。

天井と底を過去チャートから学び備えよう

さて、これで皆さんも天井と底を見分ける方法を学ぶことができました。強気相場の始まりと終わりが分かるんだから億万長者ですね!…なんて甘いことはありません。実際に相場と対峙していると、本当にこれが天井…?うーん…判断が難しい…。ということが大半です。いくら本を読んで学んだからといっていきなり自信満々で確実に実践することはできないと思います。過去の下落局面のチャートをみて、ディストリビューションやフォロースルーの動きがどのように見られたか実践演習しておくことが大切です。

Trading viewでは指数自体の出来高データが提供されていませんが、ETFのチャートを使えば株価&出来高の動きを過去数十年分の天井と底を使って検証することができます。過去チャートで感覚を掴んでおけば、実際の相場でも正しい判断ができるようになるでしょう。

まとめ

強気相場の天井サイン

  • ストーリングとディストリビューションの動き
  • 最高値更新の動きの失敗
  • 強気相場を牽引してきた主導株の失速

弱気相場の底サイン

  • フォロースルーの動き
  • フォロースルーを裏付ける調整の動き

最後に「オニールの成長株発掘法」で印象的だった言葉を2つご紹介します。

「マーケットの動きを予測するのは絶対に不可能でだれにもなし得ない」―このような誤った思い込みは、元はといえば四〇年以上前に投資信託のマネージャー数人がマーケット予測に挑戦して失敗して終わったことから生まれた迷信だ。

ウィリアム・J・オニール. オニールの成長株発掘法 【第4版】

マーケットの方向を知るには、主要な指数を毎日のように観察して分析しなければならない。市場の今後の動きを人に聴くなど、もってのほかだ。日々の市場の動きを正確に読みとる力を自分で身につけるのだ。

ウィリアム・J・オニール. オニールの成長株発掘法 【第4版】

参考文献

私が取り組んでいるCAN-SLIM投資は、オニールの成長株発掘法という書籍の中で紹介されているものです。ブログでは本書の内容を基に私なりの解釈や検証結果を紹介しています。

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